不動産鑑定評価にかかる報酬はどのように決まるか?
不動産鑑定評価報酬について
不動産鑑定評価書を作成する場合に「評価報酬」を頂きますが、その金額についてご説明します。
よく、「相場はいくらなのか?」というご質問を頂くので、弊社の場合は「20万円~30万円ぐらいです」と答えますが、このような報酬は評価対象となる不動産の場所や種類や価値によっても変わります。
例えば、「名古屋市内で固定資産税評価額が5,000万円の土地で相続が発生したので時価を把握したい」場合には、まさに相場感の作業で済むと思いますが、「一部に借地権が設定してある」とか、「古い家があり契約書がないまま何十年も住んでいる借家人がいる」とか、「沖縄の宮古島にあり公図はあてにならない」場合には、想定される作業量や要する手間が違ってくるので、それに応じて報酬額が変わってきます。
同様に、固定資産税評価額が5,000万円の土地と5億円の土地では、規模や立地条件も異なり、価格を求める手法は市場性以外に収益性などの多様なアプローチによる検証が必要となるため、その作業量の違いなどが報酬の違いに反映されてくると考えます。
かつては一律な報酬体系だった
かつて公共団体がその事業のための用地を取得する場合に、我々不動産鑑定士に業務を発注する報酬額は「鑑定評価額×類型(不動産の種類)」のマトリックスで定められた報酬テーブルを使っていました。
ここでいう不動産の種類とは、住宅地とか商業地という種類でなく、更地(土地のみ)、自建(土地と建物が同一所有者に帰属し、所有者によって使用されているもの)、貸家(土地と建物が同一所有者に帰属しているが、建物が賃貸されているもの、賃貸アパートなど)などを意味し、立地条件ではなく土地と建物とそれに付着する権利の有無で種類分けをしたものです。
このようにかつては金額が高くなればなるほど、また、更地をベースに権利が付着したり、建物が存在しているほうが手間がかかるという前提で報酬が決められていました。
今でも一部の公共機関や長年経営されている個人事務所さんなどでは、この方式を踏襲しています。
不動産鑑定評価報酬は高いのか?
先ほどの例の20万円や30万円は一見するとそれなりの金額でありますが、上記の例でいう5,000万円の物件ならその0.4%~0.6%です。このように特殊な物件でない限り、鑑定評価報酬額は物件価値の概ね1%内におさまると思います。”高い”というイメージの不動産鑑定評価報酬ですが、実は宅建業さんの仲介手数料に比べるとずっとリーズナブルです。
しかし鑑定対象となる物件は市場では売買されないような物件もあり、広大な山林なのに鑑定評価額は「0円」で、報酬額は何十万円ということもあります。そして今後は山林でなくても普通の市街地でも過疎化が進んだ地域ではありえると考えます。
そうなると高い評価額だから高い報酬は当然というのが少しづつ変わり、今後はその判断の重要性とか、鑑定評価書の活用方法が我々の報酬を決めるものになるのかもしれません。
報酬額も大事ですが、鑑定評価をいかに活用すべきかが大事になってくるので、これらを含めてお気軽に相談頂ければと思います。