• 田井の目

2020.9.17 名古屋の公園が生まれ変わる ~公園の開発手法とその効果~

コロナの影響により明るいニュースが少ない中、今週の9月18日、私の地元の名古屋では、注目すべき施設がオープンします。それは「レイヤード久屋大通パーク」という、もともとあった「久屋大通公園」の再開発により誕生する都市公園であります。そこで今回はこの施設の概要と、当該施設の誕生のきっかけとなった最近注目の開発手法であるパークPFIについてご紹介したいと思います。

〇レイヤード久屋大通パークについて

名古屋のシンボルであるテレビ塔の下に広がる「久屋大通公園」は長く市民の憩いの場であり、確かに日中は緑が美しいですが、芝生が広がるような開放的なスペースはなく、夜は薄暗くて人通りも少ないため、かつては“不良外国人”のたまり場にさえなっていたこともありました。近年は治安等の問題はないものの、公園としての機能は今一つのままでした。そこで、より市民が集いやすい公園にするために、名古屋市は事業コンペによって公園整備運営事業者を選定し、その結果、全国で「レイヤード」ブランドで公園再開発事業を手掛けている三井不動産が主体となり、整備を行うことが2018年2月に決定しました。コロナの影響で工事が遅れましたが無事完了し、約5.4万㎡の土地に35の店舗や公園施設が配置され、散歩や飲食、ショッピングを楽しめる都市公園に生まれ変わります。

〇Park-PFIについて

この久屋大通の再開発を可能にしたのは、2017年6月の都市公園法の改正による、公募設置管理制度(Park-PFI)の創設でした。元々都市公園内でも、簡易なレストランや物販店などは、民間事業者などが公園施設を設置して管理できる制度(設置管理許可制度)はありました。しかし、このPark-PFIでは、事業期間を20年以内に延長し、建ぺい率の緩和などで事業者により大きなインセンティブを与えます。そして民間の収益を確保しつつ、公共の公園管理コストを抑え、住民サービスの向上を図ることを目的としています。またPFI法によるPFIとは違い、議会の承認が必要となるわけでなく、特別目的会社の設立も必須でないという自由さも事業者にとってはメリットになっています。この制度を活用し、近年急速に公園内に民間のおしゃれなカフェなどが全国で作られていて、東京でも同じブランド名の宮下公園が話題となっていますが、この久屋大通は現在国内最大のPark-PFI事業ということで注目を集めています。

〇都市公園が持つ可能性

数年前韓国に行ったときに、かつて高速道路を作るために埋めてしまった川を復活させた清渓川(チェンゲチョン)を見学しました。そこでは、再整備された自然環境が、単なる市民の憩いの場のみならず、街歩きで疲れた体を休める観光客を呼びこむことが出来る場所となっていました。大きなビルを作るわけでなく、自然を整備するタイプの再開発は、大いなる田舎である名古屋でも十分可能なことなので、このようなものが出来ればいいのにと思っていました。名古屋は「名古屋メシ」と言われる、独自の食べ物目的の観光客は多いのですが、行くべき観光施設が少ないのが特徴であります。しかし、この新しくなった公園では、ハイブランドの店舗でショッピングを楽しんだ後に、ぶらぶら散歩して芝生の上でテイクアウトのご飯を食べて昼寝だってできてしまうという、都心でありながらアウトドアの楽しみを得ることがきる、稀な“体験型観光施設”となることが期待できます。そしてこの人の流れはきっと周辺環境の変化をもたらし、商業施設のテナントの変化や地域活性化につながると考えられます。

新しく生まれ変わった久屋大通パークが名古屋の新しい魅力を発信する場であることを個人的には期待しています。再開発に興味がある方も、ただ単に芝生に横になりたい方も、県の内外問わず遊びに来て頂きたいと思います。

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