戸建賃貸ブームの乗り方
2010/07/03
戸建賃貸ブームの乗り方
知人の方から頂くメールマガジンに、「資産の有効活用の一つとして、新築の賃貸用の戸建住宅に熱い視線が注がれている。賃貸住宅として供給されているのはほとんどが共同住宅タイプである一方、一戸建てに住みたいというニーズは高くその需給のアンバランスさから戸建賃貸市場が活況を呈している!」
なんて記事がありました。
うーんなるほど、そんなような気もしますが、はたしてそうなんでしょうか?疑り深い性格の私は自分なりにバックデーターを調べて検証してみました。
まず、新規供給として最新である平成22年5月の建築着工統計のP12の表6を例にとってみると、5月の着工戸数59,911戸のうち、一戸建ては33,633戸で全体の約56%、そのうち貸家として利用されるのを目的として建てられたのは453戸しかなく、全体としては1%に満たないのがわかります。なるほど供給は確かに少なそうです。
そして需要に関しては、平成21年度版「土地問題に関する国民の意識調査」なんかを見ると、P12の今後の望ましい住宅の形態として一戸建てが全体では77%、賃貸でも56.1%とやはり高い水準を示していることがわかり、“ニーズは高い”といえそうであります。
。。。しかし、当該調査の時系列的な状況を見てみると平成7年では一戸建てを望む人が90%だったのに年々減って、現在は80%を切ってしまっているという事実も看過すべきでないと思います。単純に考えて、少子・高齢化が進み、単身者が増えていく状況で、維持管理も大変で一般的にセキュリティも劣る戸建住宅が10年後や20年後に今よりもニーズが高まっているとは少々考えづらいですね。
もっと様々なデーターから検証すべきでしょうが、私個人の考えでは、相続対策としての目玉商品である小規模のマンションやアパートが、供給が増えて空室も多くなったことにより、なかなか売れなくなってしまった。そこでハウスメーカーは、その代替商品として新築の貸家用戸建住宅に目をつけて一斉に新商品を開発し、PR合戦し始めたため、最近巷で言われている戸建賃貸市場の活況さが生まれているような気がします。
従って戸建賃貸をすれば必ずもうかると勘違いし、「駅から離れても入居が確保できる」とか、「同レベルのマンションより高い家賃が安定収入確保できる」というセールストークを過信して、十分な検討もなく投資をしてしまうと、タイヘンなことになってしまうのではないでしょうか?
もっともその一方で今まで立地条件はいいのに、敷地の規模も小さく、街路や公法上の規制からアパートやマンションが建てられないため、しょうがなく駐車場にしていたものの、空きが多く、高い固定資産税に悩んでいた地主さんにとっては、アパートに比べて比較的少額な投資(1,000万円以下の商品も続々でているようです)で、固定資産税の減免を受けられたりや相続の評価額を下げることができる商品が増えてきたことは間違いがないと思います。
このように投資や有効活用における選択肢が広がったのは事実でありますので、どんなメーカーがどんな商品を出しているかをしっかり把握し、なによりも建てるべき土地の調査をしっかり行ってから、“波”に乗るのがいいのではないかとおもいます。
【関連資料】
→ 建築着工統計調査報告(H22.5) (PDF:817KB)
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