相続評価と鑑定評価のジレンマ
2012/04/15
相続評価と鑑定評価のジレンマ
高齢化社会の到来に加え国内の財政事情が厳しくなることから基礎控除額の見直しなどのよる課税強化により相続税に対する関心が高まっています。
相続対象となる資産の多くが不動産の場合、かつては小規模宅地の特例などがあり死亡数の4%程度だったのが近年は倍以上に増えているという推計もあるようです。
相続対策として不動産をどのように評価したり、どのように活用するかによって大きく税額が異なりますが現在の相続対策は不動産の評価対策が中心のような気がします。
というのも我々不動産鑑定士が相続税に関連し問い合わせをうける代表的な例として広大地評価として判断する評価があります。これは簡単にいうと、規模が大きい土地であるが、マンション利用が適切でなく戸建住宅地として利用するのが適当と判断し評価することです。
なぜなら戸建住宅地としたほうが一般に開発行為などにより道路や公園などの公共潰れ地が生じたり、分譲できる住戸数が少ないので、マンション用地より価値が低く、価値が低い方が相続税の評価が下がり、税額が安くなるからです。
しかしそこで悩ましいのは、鑑定評価上で価値を判断する概念で最も大切なのは、”その土地の価値を最大限に高まる方法はなにか”という最有効使用を考えることが最も大切であるもかかわらず、相続にあたってのニーズは”その土地の評価を最も下げる方法はなにか”なので評価上のジレンマが生じていることです。
もちろん、財産評価基準並びに鑑定評価基準に照らしても合理的にマンション適地ではないと判断することや、財産評価基準上では反映することが出来ない、形状が劣ることや土壌汚染があることなどの減価要因の市場価値を反映して適切に評価するということはすんなりできますが、どう見てもマンション用地としての利用がベストと考えられる土地に屁理屈をこねて戸建住宅がベストであるという判断は税務署から修正申告を要求された場合のリスクなどを考えても私は鑑定士としてできないのです。。。
どうやらその辺を誤解されて、不動産鑑定をすれば必ず評価が下がる的なことをおっしゃている自称相続コンサルタントさんもいらっしゃるようであり、それに不動産鑑定士が利用されている感もありますが、私は違うのかなーと考えています。
今後、相続税がより一般化していく過程で、”評価”に対する客観的な判断基準がより求められていき、厳密化していくことで、相続対策の主軸は”どのように活用するか”に移っていくのかも知れません。
そうなったときにこそ本当に我々不動産鑑定士の出番がやってきてほしいものです。
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