• 田井の目

国際化もカネ次第?

2012/07/22

国際化もカネ次第?

今週は我々不動産鑑定士の国際化業務を考えるうえで二つの面白い新聞記事がありました。

一つ目はJREITの海外不動産取得の実質解禁のニュースです。

J-REITの発足当社は海外不動産の鑑定評価の方法が定まっておらず、取得に際して投資家の適切な投資判断を確保するための状況が整っていないことなどが主たる理由となり、東証の規程によって制限されていました。

そこで国土交通省において、ワーキンググループが作られ「海外投資不動産鑑定評価ガイドライン」が策定されるなどの対応が進み制度的には2008年より可能となっていました。

しかしそれが進まない本当の理由として評価の問題でなく結局はお金、すなわち税務の問題だったようです。

J-REITには外国での納税額を国内での納税額から控除できる外国税額控除制度というのがなく、国内の法人税が課税されていないJ-REITの場合、投資国での納税負担がそのまま発生してしまうことになるそうです。(参考サイト

それを回避するためにSPCを組成し、法人経由で投資したほうがいいのですが現在は”他法人の株式の取得割合制限(投信法第194条)”という規制がありそれができませんでした。

そこで今回はこの部分などを見直すことにより、SPCを通した不動産の取得を可能にするものであります。

なんか妙にイオンのREIT設立との発表タイミングが合っていて政治的な要因もありそうですが今度こそ現実的な障害が取り除かれることにより、海外不動産の取得が進みそうです。

しかし、その一方でちょっと足かせになるような問題が同日の新聞紙上に出ていました。それが国際会計基準(IFRS)の米国の適用判断時期の先送りのニュースです。

このIFRSは不動産の国際的な評価基準(IVS)と密接な関係にあり、お金、すなわちコストがかかるのを主たる理由にアメリカがどうするか決めないから日本もどうするか決めないという状態がもう延々と続いています。

不動産の評価では収益性を分析するときにIFRSや米国基準(US-GAAP)をバラバラに採用していると、どっちがどうなのか比較が難しいし、比較できた結果を日本の投資家に説明するために日本の会計基準に置き直すなんてかなり手間がかかるわけですが、導入のコストが重しとなって進んでいないようです。

J-REITとIFRSとは一見関係性がないようですが、不動産が金融資産として扱われる昨今は、密接な関係があるといえます。

これらのふたつの記事を眺めたときなんとなく相反する動きであり、それらを解決するにはやっぱりお金(税金やコスト)の問題を解決することが必要なんだな-と感じました。

【関連資料】
2012.7.18 日経新聞より (PDF:188KB)

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