「消費税の増税は個人間売買による中古住宅市場を活性化させる」論
2012/08/12
「消費税の増税は個人間売買による中古住宅市場を活性化させる」論
消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が10日成立し、いろいろな意見がでているようです。確かに悪化した財政状況を改善し、国の信用力とか社会不安を軽減する効果があれば意義のあることだと思います。
しかし、単純に考えて税金が上がって購買意欲が上がるわけもなく、それが高額商品である不動産などはかけ込み需要があってもその反動が非常に懸念されます。
産経新聞の8月11日版によると平成9年度に税率が3%から5%に上がった際、直前の8年度の新設住宅着工戸数は前年度比9・8%増の163万戸でしたが、9年度は17・7%減の134万戸と急落し、9年度は実質国内総生産(GDP)成長率も0・1%で前年度(2・7%)から失速し10年度はマイナス成長に陥ったそうであります。
もし前回と同じように考えられるなら今年、来年にかけて不動産市場は活況となりますが平成26年4月に8%になったと同時に落ち込み、27年10月にはさらに10%に引き上げられることが決まっているため前回以上に激しく落ち込みはしないのかと心配になります。
このように消費税が上がると、不動産の市場や流通形態に関しても今までと異なる動きが出てきそうです。
それは従来はマイフォームを買う=新築を買うというイメージが高く人気があったのですが、消費税を払わなくていい物件、すなわち中古物件で、かつ個人間売買が活性化するような気がします。
もちろん現在でも中古住宅市場はあります。しかし売主が不動産業者(事業者)だと建物に関し消費税がかかり個人だと消費税がかからない、というこの差がより大きくなることで、売主が個人であることに関心が高くなると思います。
そしてこのようにちょっとした制度の違いに敏感で、賢くすばやく情報をネットで得ることができるようになった消費者は、この消費税以外にも、従来ではリスクが高いと思われていたため仲介手数料を払って宅建業者にお願いしてきたことを回避するため、中古物件であっても様々な情報を集めて自ら判断し、無料の売買契約書をダウンロードして書式を完成し、やはりネットを駆使して探した、安く対応してくれる弁護士などの専門家にリーガルチェックや契約事項のチェックをさせ、個人間で売買契約を完結するような動きが加速するように思われます。
前回の平成9年と今の不動産市場で大きく異なっているのは、ITなどで情報化が進み、なんでも調べられてしまう時代になったことです。そしてこの情報化がより節税になったり効率的であったりするような取引や市場を生みだしていくような気がします。
なんせ政権そのものがころころ変わり、現状では不動産業者さんが仲介に入ることにより作られる重要事項説明書が、銀行融資における重要な書類となる実態があるようなので、予想どうりとはいかないと思いますが、税制とは異なる次元で中古住宅の流通の促進化は図られているようであり、不動産の個人間売買ともにキーワードとしておさえておきたいとこです。個人間の売買や同族法人と個人の売買に対してアドバイスできるように、制度の変化に対応し、売買実務に強い鑑定士であることの必要性を感じますね。。。
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